あたしの名前は里美。もうすぐ21歳。 来週は誕生日。 子供のころは誕生日といえば、心が躍った。 家族でケーキを食べて。プレゼントもらって、それはうれしかった。 もちろん今でも、家族や友達にプレゼントをもらったりするけど、 昔みたいにパーティーなんかすることはないし、 もう、子供のときのように胸がときめくものではない。 「来週は誕生日か・・・」 その程度の気持ちしかわかない。 菊乃から電話が来る。 菊乃は小学校のときからの親友。 そういえば去年は菊乃と過ごしたっけ・・・。 菊乃「ねぇ、もうすぐ誕生日だよね。プレゼントなにがいい?」 里美「ありがとう。誕生日覚えててくれるの、菊乃ぐらいだよ。 また、ご飯食べに行こうよ。」 菊乃「何言ってるの? 誰かさんに誘われているんじゃないの?」 里美「だって、誕生日のことまだ話してないもん・・・」 菊乃「えー? そんなはずないよ。兄貴が一ヶ月前からしつこく聞いてきてたもん。 もう予定、組んであるのかと思ったよ。」 里美「昨日もデートしたけど、そんな話はなかったよ。」 菊乃「相変わらずとろいなぁ、兄貴は。ところでさぁ、兄貴になにがほしいか、 さりげなく聞いてくれって頼まれてるんだけど、なにがいい?」 ぜんぜんさりげなくない。 この、裏表ない、さっぱりしたところが菊乃の魅力だと思う。 里美「いいよ。何にもいらないよ。」 菊乃「そんなコトいわないで。わたしも頼まれているんだからさぁ・・・」 里美「でも、あたし、男の人からプレゼントもらったことないし・・・」 菊乃「もう、それだから里美は・・・・・・わかった。あたしが適当に答えとく。」 たわいもない話をおえ、電話が切れる。 そうか・・・緑茶さん、誕生日考えてくれていたんだ。 別に何にもほしくない。 ただ、一緒にデートしてくれればそれで十分うれしいんだけど。 次のデートのとき、緑茶さんは誕生日の予定を聞いてくれた。 緑茶「あの、妹に"偶然" 聞いたんだけど、来週、誕生日なんだって?」 里美「はい。」 緑茶「あのさ、予定が入ってなかったら、お、俺と一緒に食事行きませんか?」 里美「はい。」 緑茶「あっ、もちろん、他の大切な人と予定が入ってたりとかしたらいいんですよ、断ってくれて。」 そんなのあるわけないじゃない。 緑茶さんのこういうところは、ちょっと嫌い。 デートの約束もきまり・・・といっても、平日なので、食事に行くだけだけど。 いつもと変わらないけど、それでもうれしい。 ちょっとわくわくする。 こんなのは、小学校のとき以来かな・・・。 小学校か・・・ 小学校のとき好きだった人と、誕生日を過ごすんだ・・・ 当日。なんかそわそわする。 仕事が手につかない。 一日が長く感じられた。 やっとの勤務時間終了。 大急ぎで待ち合わせ場所へ。 そんな急いでいっても、緑茶さんがいるわけないのに、なにやってるんだろう、私。 到着。 いるわけないか。待ち合わせ時間より30分も早いんだから。 30分なにしよう、と思っていたら、後ろから声がした。 緑茶「はやかったね」 里美「えっ? どうして?」 緑茶「仕事が速く終わってね。俺も今来たところ。」 うそだ。もっと早くからいたに違いない。 最近、緑茶さんの”うそ”がわかるようになってきた。 緑茶「誕生日おめでとう。 ちょっと予約より早いけど、お店いこうか。」 里美「はい。」 相変わらず、会話は少ない。でも、あたしにしたらいっぱい喋っているほうだ。 緑茶さんはわたしの話を何でも聞いてくれる。 仕事のこととか、家族のこととか。 悩みとかなんでも聞いてくれる。 お兄ちゃんみたいな人。 緑茶さんは”お兄ちゃん”といわれるのがイヤみたい。 でも、あたしは”お兄ちゃん”である緑茶さんが好き。 緑茶さんには申し訳ないけど、今でも緑茶さんは大事なお兄ちゃんだと思ってる。 席について注文。 まずはワインで乾杯。 緑茶さんは、おもむろにプレゼントを取り出した。 リボンのかかった小さな箱。 緑茶「お誕生日おめでとう。」 里美「あっ・・・ありがとうございます。」 うれしい。 プレゼントなんかどうでもいいと思っていたのに、もらうとすごくうれしい。 緑茶「開けてみて・・・。」 箱を開けると、口紅だった。 里美「うれしい。」 思わず声がでた。 里美「これって、すごく高いやつじゃないですか?」 緑茶「いいんだよ。気にしないで。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・ちょっとづつ、僕に返してくれればいいからね。」 ? 返すって? なに? ? 緑茶さんは 「しまった!!!!!111!!」 という顔をしていた。 緑茶さんは時々、緑茶さんのキャラクターからは想像できないことを言う。 「友達」が教えてくれるんだって。 実はこれが、とある落語家の持ちネタだと知ったのはずいぶん先のことだった。 食事は楽しかった。 何を喋ったわけじゃない。いつもとおんなじ会話だ。 だけど、今日のディナーはとてもうれしかった。 デザートが終わって、化粧室へ。 緑茶さんのプレゼントを開けてみた。 男の人からの初めてのプレゼント。 こんなにうれしいもだとは思わなかった。 口紅・・・これ、高いのに・・・。 早速つけてみた。 緑茶さん、喜んでくれるかな・・・。 戻ると、緑茶さんはお勘定を済まして待っていてくれた。 席について、一言。 里美「お待たせしました。」 緑茶「さぁ、出ようか。公園散歩しない?」 里美「・・・・・・・」 緑茶「ん?どうしたの?」 里美「・・・・・・・」 ・・・・・・気づいてない・・・・・・ 公園を散歩。 ・・・ここは、お兄ちゃんが自転車教えてくれたところだ。 なうかしい思い出がよみがえる。 思わず、”お兄ちゃん”と声がでそうになったが、我慢。 緑茶さんはそれを最も嫌うから。 緑茶「ここで、里美さんと自転車の練習したっけ?」 里美「・・・・・・はい。」 なぜか、急に涙が出そうだった。 思わず立ち止まって、目をぬぐうと、 ポケットに手を突っ込んであるく緑茶さんのそのうしろ姿は、 あの時の”お兄ちゃん”のままだった。 私は、私の大事な人にかけより、そっと腕を組んだ。 一瞬止まった緑茶さんは、何事もなかったかのように、また歩き出した。 緑茶「家まで送るよ。」 里美「・・・・・・はい。」 暗くて怖い、帰り道。 でも、もう、怖くはないんだ。 このままずっと、この人と歩き続けたい・・・・・・。 妄想物語 初めての誕生日編 完
俺は緑茶。今日、人生2回目のデートを、難ありだがこなした俺。 まだ心臓がバクバクいっている。 これがデートか。 もう一度彼女に会いたい。いや、一度じゃなくって、二度も三度も、 ずっとずっと会いたい。 すでに里美のことで頭がいっぱいだ。 VIPPERに今日のデートの報告 緑茶「・・・と、こんな感じだった」 VIP「緑茶 乙」 VIP「まぁ、2回目にしちゃ上出来だ。」 VIPPERと反省会。信頼できないヤツラだが、心の支えだ。 今日もうまくいったのも、彼らのおかげ・・・といえばおかげだ。 一応感謝しておく。 VIPPERのひとりがレスをくれた。 VIP「里美は早生まれだったな。誕生日はいつだ?」 緑茶「うん。早生まれだよ。」 VIP「だからいつだよ?」 緑茶「知らない。」 VIP「おまえ、そんなの常識だぞ! まったくこのDTが・・・!!」 VIPは常に一言多い。 しかし気にはしない。 そんなおれも VIPPER。 VIP「妹に聞け。お前の妹は飾りか?」 VIP「安価! 安価!」 緑茶「安価はねーだろ。誕生日聞くだけだぜ。」 VIP「里美タンの好みも聞くんだ!!」 早速妹に電話。 菊乃「誕生日? 1月30日だよ。」 緑茶「そうか。わかった。ところで、彼女何ほしいと思う?」 菊乃「しらない。何だろね?」 緑茶「悪いんだけどさ・・・その・・・さりげなく聞いといてくれない?」 菊乃「そんなの自分で聞きなよー」 緑茶「そういわないで。頼むよ。なっ?」 菊乃「一万円。」 緑茶「( д) 。゜」 菊乃「不満?」 緑茶「いや・・・よろしくお願いします。」 VIPに報告 緑茶「妹に1万円請求された件」 VIP「テラタカスー」 VIP「兄の誇りはどこへいった!」 VIP「よし、妹うp 話はそれからだ。」 2日後、妹から連絡。 菊乃「○○堂のXXっていう、新しい口紅。ほしがってたよ。」 緑茶「サンキュー。」 菊乃「あたしも、いいなぁって思うのよね。」 緑茶「ふーん。そーかぁ・・・。口紅か・・・。」 菊乃「あたしの分はリボンとか要らないからね。」 緑茶「わかっ・・・・・・って、どういうこと?」 菊乃「そういうこと。」 緑茶「妹にブツまで要求された件」 VIP「妹の住所晒せ。突撃汁!!!11!!」 里美の誕生日の一週間前。夕食に誘った。 緑茶「あの、妹に"偶然" 聞いたんだけど、来週、誕生日なんだって?」 里美「はい。」 緑茶「あのさ、予定が入ってなかったら、お、俺と一緒に食事行きませんか?」 里美「はい。」 緑茶「あっ、もちろん、他の大切な人と予定が入ってたりとかしたらいいんですよ、断ってくれて。」 OKとれた。 GJ.>>自分。 VIPPERと連絡。 緑茶「そういうわけで、誕生日の予約は取れた。」 VIP「プレゼントはどうした?」 緑茶「口紅。妹がそういってた。」 VIP「出会って2週間で口紅かよwww」 VIP「妹 はぁはぁ」 アンチレスがしばらく続いた。 VIP「いいんじゃね? 妹が選んだんだろ?」 緑茶「なんか、妹が欲しかっただけな気もする件。」 VIP「もう、買っちゃったんだろ? いまさらびくびくするな。」 VIP「渡すとき、こう言うんだ。 「高かかったけど、いいんだよ。 ちょっとずつ、キスで返してくれればいいからね。」」 VIP「きんもー☆」 緑茶「きんもー☆」 VIP「ばかやろう、これは超有名落語家の持ちネタだぞ!!」 VIP「そうか。しかし、緑茶が言っても、きんもー☆だな。」 緑茶「HAGEDOU」 VIP「本当にキスで返してくれるんじゃね?」 VIP「あるあr・・・・・・ねーよwww」 緑茶「あるあr・・・・・・ねーよwww」 ねーよ・・・ あるわけねーよ・・・・・・なぁ。 誕生日の当日。早く定時終われ!! よし。5時まわった!!チーフへ挨拶。 緑茶「すいません。ちょっと親戚の状態がやばいので、今日も・・・お先に失礼します。」 チーフ「あぁ、そうなのか。早く見舞いに言ってあげなさい。 かわいい親戚によろしくな。」 ばれてる 約束した場所に到着。 考えてみれば、こんなに早く出てくる必要はなかった。 彼女も仕事だ。空回りする俺。 あと1時間もある。 さて、なにするかな・・・ イライラいらいら 遅い。里美。 俺が早いだけだけど。 しばらくすると、里美がいそいそ、歩いてきた。 こちらに気づいていない。 緑茶「はやかったね」 里美「えっ? どうして?」 緑茶「仕事が速く終わってね。俺も今来たところ。」 俺、かっこいい。 そのまま食事へ向かった。 食事だけのいつものデート。しかし、今日は誕生日デートだ。 なぜか気合が入る。 里美さんは出会ったころより、ずいぶん喋るようになった。 内容といえば、仕事の愚痴とか、そういったものだが、 そんな日常会話が楽しいと思える今日この頃。 席について注文。 まずはワインで乾杯。 おもむろにプレゼントを取り出した。 リボンのかかった小さな箱。 緑茶「お誕生日おめでとう。」 里美「あっ・・・ありがとうございます。」 喜んでくれたみたい。 緑茶「開けてみて・・・。」 里美が箱を開けた。 里美「うれしい。」 あどけない少女の顔をしていた。本当に喜んでくれたようだ。 里美「これって、すごく高いやつじゃないですか?」 緑茶「いいんだよ。気にしないで。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・ちょっとづつ、僕に返してくれればいいからね。」 おい!!、何 言ってる>>俺 沈黙が流れる。 里美「?」 しまった!!!!!111!! VIPPERのバカ、VIPPERのアホ。 VIPPERは俺だ!! 全身冷や汗ものだったが、里美は気づかなかったらしい。 里美の天然のおかげで助かった。 食事が始まって、酒も進んで、楽しくなってきた。 恋人の誕生日を祝うって、いいもんだな・・・。 デザートが終わり、里美が席を立った。 彼女がトイレ行っている間に勘定をすます。 VIPPER知識。すこしでもポイント稼いで起きたいところ。 里美が席に戻ってきた。 里美「お待たせしました。」 じっとこちらを見つめている。かわいい。 緑茶「さぁ、出ようか。公園散歩しない?」 里美「・・・・・・・」 緑茶「ん?どうしたの?」 里美「・・・・・・・」 公園を散歩。 妹の暴露話をもとに、わずかながら、記憶が戻ってくる。 あぁ、そういえばいたな。 もーちゃん。 目立たない子だったな。運動オンチで。 自転車か。そうだ。 怖がって、なきながら自転車こいでたな。 そうだ、この木のそばじゃなかったっけ? 緑茶「ここで、里美さんと自転車の練習したっけ?」 里美「・・・・・・はい。」 ・・・・・・何年も前の記憶が徐々によみがえる。 しばし、懐かしさにふけっていた。 ふと、里美が駆け寄り、腕を組んできた。 !!!! 腕を組み俺を見つめるその女性には、モーちゃんと呼ばれたころの面影はなかった。 かわいい。 この人のためなら、俺は何できる。 心からそう思えた。 緑茶「家まで送るよ。」 里美「・・・・・・はい。」 里美の家までの帰り道。 この道が永遠であってくれれば・・・ このままずっと、この人と歩き続けたい・・・・・・。 翌日 菊乃「お兄ちゃん。口紅ありがとう。ちょっとずつ返してあげるね。」 緑茶「妹 コロス!!」 VIP「通報しますた」 妄想物語 初めての誕生日編 Another Story 完