【妄想物語】番外編

■目次

妄想物語 年賀状男編


作者紹介


■妄想物語  年賀状男編

俺は年賀状太郎。
18歳。もうすぐ高校生活にピリオドを打つ。

高校生。楽しい3年間だったと思う。
仲間たちと文化祭にむけて徹夜した日々・・・。
初めてタバコすって、危うく先生にバレそうになったこと・・・。
今ではいい思い出だ。
すべてが、懐かしい思い出だ。

そう。明日は卒業式・・・。


卒業する前に・・・
高校生活が思い出に変わる前に、俺にはやらなければならないことがある。
心のけじめをつけたい。

明日、俺は・・・
告白する。


俺は先生に恋している。
2年間、英語を教えてくれた先生だ。
いつもニコニコ微笑んでくれる、優しい先生だ。
友達の中でも人気がある。


先生にアプローチするために、いっぱい質問を作って、聞きに言った。
先生はどんな質問でも、丁寧に答えてくれた。
発音にこだわりのある先生で、よく発音の指導を受けた。
年賀「先生いいよ。そんなの受験にでないから」
先生「何言ってるのよ、英語は通じなきゃ意味がないんだからね。
  年賀君、先生の口見て。」
先生は口を大きく開けてあけて発音を教えてくれる。
真っ赤な・・・くちびる・・・色っぽい・・・
先生「年賀君聞いてる?」
年賀「・・・はい?、はい。聞いてますよ。」

俺はどんどんとりこになっていった。


先生と喋る口実のためにはじめた勉強。
おかげで英語の成績はいつもよかった。
先生には感謝している。

最近は、英語の質問がないときでも先生に「質問」しに言ってる。
周りの先生の白い目が気になることもあるが、そんなものは気にしない。
内容はほとんど雑談だ。
とりとめもない話で2時間くらい喋っている。

俺は先生が好きだ。
付き合いたい。


だが、自分の中の常識がそれを否定する。
相手は先生だ。先生が生徒と仲良く振舞うのは当然のことだ・・・
それに、俺だけじゃないかもしれない・・・。
いや、あんな美人、他のやつがほっとくわけないか・・・
もしかしたら、実は彼氏が・・・
いや、彼はいないって言ってた。
でも、本当のところは・・・

毎晩こんなことで悩んでいる。
勉強が手につかない。
バカだ俺は。

一度、話の展開で、何度か冗談ぽく言ってみたことはあった。
年賀「先生好きだよー。先生、俺と付き合ってよ。」」
先生「年賀君が大人になったらね。」
いつもこんな感じ。
ぜんぜん本気にされていない。


正月。
受験勉強が手につかない俺は、先生に年賀状を書いた。
自分の気持ちをはっきりさせるため。

これで返事が来なければ、脈はなかいということだ。諦めがつく。
勉強に集中できるはず。


正月・・・年賀状は来なかった。
なぜか、晴れ晴れとした気持ちで初詣へ。
素直に合格祈願し、お賽銭投げてきた。

正月こそ、休んだものの、そこは大学受験生。
翌日から勉強した。
勉強ははかどったが、心なしか、英語が嫌いになったようだ。


毎日勉強。
俺は受験生。当然の姿だ。
1月5日。新聞を取りに言った際、送れて配送された年賀状を見つけた。
特に期待するわけでもなく、年賀状をめくった。
友達からの年賀状にまじって、先生の名前を見つけた。

キタコレ

先生への気持ちがフラッシュバックする。
が、今回は冷静だった。
受験終わって、卒業して・・・そしたら告白しよう。
そう決心した。


受験は終わった。
望みどおりの結果が出せて満足している。
友達と、「受験は英語だよねー」という話をするたびに、
先生のことを思い出す・・・。

明日は、卒業式だ。


卒業式当日。
卒業証書を受け取とると、やっぱり実感がこみ上げてくる。
いまいる中の半分以上の連中とは、もう再開する事もないんだろうな・・・。
いつか殴ってやろうと思っていた、担任の先公。泣きそうな顔してた。
案外いい人なのかもしれない。


そして・・・先生。
告白しなければ、もうあえないかもしれない。
これが最後だ・・・。


友達がみんな高校を去っていく中で、俺はひとり、ボーっとしていた。
俺たちには卒業式でも、先生には普通の日。夕方まで先生はいた。

人がいないのを見計らって、先生のところへ。

年賀「先生・・・」
先生「あら、年賀君。まだ帰ってなかったの?
卒業おめでとう。大学も決まったし、今が一番いいときだよね。」
年賀「先生・・・質問があるんですけど・・・」

違うだろ!俺

先生「卒業式なのに勉強? 年賀君のそういうところ素敵だなぁ。」
年賀「いや、そうじゃなくって、あの・・・その・・・」
いつもは気にしていないのに、今日は回りの人間が気になる。
みんな、耳を傾けているんじゃないか・・・
年賀「その・・・あの・・・」
先生「なに?」


言葉が出ない。
勇気を振り絞って・・・
年賀「あの、先生、俺・・・」
先生「?」
年賀「教室来てくれませんか?」

バカー 俺ー 

先生「いいわよ。」
  !!

先生「先いってて。これ片付けたらすぐに行くから。」
SNEG?


とぼとぼと教室へ。だれもいない。
みんな帰ってしまった。

自分の机に座って先生を待つ。
いままで数こなした、エロゲのシーンが走馬灯のように・・・
ちがう!そんなことあるわけないだろ!

何を喋るか考える。
いろいろ考えるが、エロゲのシーンが邪魔して、先へ進まない。
とりあえず、テント張っているのだけは何とかカモフラージュした。


そうこうしているうちに、先生は来た。
先生「質問って何?」
エロゲのシーンも、せっかく考えたセリフも、すべてが吹っ飛ぶ。頭の中は真っ白。

年賀「先生、・・・お・・・俺と付き合ってください。」
先生「それは年賀君が大人になってからね。」
やさしく、いつもの口調でかわされた。

年賀「おれ、まじめです。先生がずっと好きでした。」
先生「冗談でもうれしいわ。ありがとう。」
先生はいつものように微笑んでいる。
しかし、余裕のない俺の眼を見て、ちょっと顔が変わった。


先生「冗談でしょ? 本気なの?」」
年賀「本気です。この2年間、先生と話をするためだけに、嫌いな英語、勉強してたんです!
  ずっと先生のことが好きでした」
先生「あたし、10近く年上なのよ?」
年賀「関係ないじゃないですか! ずっと先生が好きでした!
  俺と付き合ってください!」
先生「わかってる?私は教師で年賀君は・・・」
年賀「関係ないじゃないですか!ずっと先生が好きでした!
  俺と付き合ってください!」

俺必死。
先生が他に何を言ったのか、覚えていない。
俺は、ただ同じことを繰り返し訴えていた。
無我夢中だった。


・・・沈黙が流れる・・・
数分もたってないのだが、1時間以上経過した気がした。
足が震えているのがわかる。

気持ちは伝えた。後悔していない。
気持ちがすっきりすした。
なんか、このまま断られてもいい気がしてきた。


先生「ありがとう。だけど・・・」
年賀「・・・だけど?」
先生「やっぱり、私と年賀君は教師と生徒なのよ。」
年賀「・・・・・・」
先生「常識から言って、おかしいわ。」
年賀「・・・・・・」
先生「だから、最初は友達から・・・ね。」
年賀「・・・・・・え・・・」

また、沈黙が流れる・・・

先生「年賀君、駅まで一緒に帰ろうか・・・・・・」
年賀「・・・・・・はい・・・」


駅までの帰り道。
春は桜が満開になるこの並木道を、いま、先生と歩いている。
桜はまだ咲く気配がない。

年賀「先生、桜が咲いたら、また一緒にこの道を歩いてくれませんか?」
先生「・・・・・・喜んで。」


桜はまだつぼみだ。花が開くまでには、まだまだ時間がかかりそうだ。
だが、いつか必ず、美しい花が咲く。
そんなことを思う、18歳の春だった。


妄想物語 年賀状男編
 完

年賀状男に幸あらんことを。


■作者紹介

722 :妄想家が申そうか :2006/01/13(金) 22:09:26.82 ID:ydHeEFbh0

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